― 理念だけでは文化は続かない ―
国立美術館や博物館に対して収益目標が課され、未達の場合は再編や統廃合の可能性があるという報道を受け、「文化は収益とは違うところにあるのだから国が守るべきだ」という意見を見かけました。
国立美術館・博物館に重いノルマ。未達成なら閉館含めた再編も──国が突きつけた、第6期中期目標の衝撃 美術手帖
この言葉には一見もっともらしい響きがありますが、私はこの意見に対しては賛同しかねる立ち位置です。
文化政策や文化経済学の研究では、むしろ逆の指摘がされています。
文化経済学では、文化事業は「コスト病」に陥りやすいと言われています。
これは経済学者 Baumol & Bowen(1966)が指摘した現象です。
例えば演奏会は
・演奏する人数
・演奏時間
・準備
が100年前とほとんど変わりません。
しかし
・人件費
・施設費
・運営費
は社会とともに上がっていきます。
つまり文化は、構造的に赤字になりやすい分野なのです。
そのため世界の文化政策では
・公的支援
・民間支援
・自主収益
の組み合わせが必要とされています。
文化は確かに利益だけで測れるものではありません。しかし同時に、お金が回らない文化は長く続きません。文化を守るとは、単に守るべきだと言うことではなく次の世代まで続く仕組みを作ることなのだと思います。
つまり、文化が後世に残るかどうかは「持続可能な仕組みがあるかどうか」に大きく左右されということです。
文化を残すためにシリーズ
①文化はお金ではないのか ◀今ここ
― 理念だけでは文化は続かない ―
②文化を残す人の共通点
― 研究と実務の視点から見えてくること ―
③文化を残すために本当に必要な4つのこと
― 体験・継続・発表・地域という文化の循環 ―
④なぜ文化は衰退するのか
― 文化研究が示す共通する原因 ―
⑤文化を残す人が絶対にやらないこと
― 文化を衰退させる共通パターン ―
⑥日本文化が今後生き残る条件
― 文化は未来の中で育つ ―
【まとめ】文化を残すとはどういうことなのか
― 未来の中に文化が生きる環境をつくる ―


